「資本論」に書かれている恐慌のメカニズムには、資本主義につきもののマネーの暴走が引き起こす恐慌についても触れられています。
それは、19世紀のイギリスで起こった鉄道株のブームに関係した恐慌でした。
1820年代、鉄道が実用化されると、大量輸送が生み出す莫大な富を目当てに、次々と鉄道建設計画が立てられました。
鉄道建設の資金をまかなうため、鉄道株が発行されました。
資本家はこぞって銀行からお金を借り、鉄道株を買いあさります。
その結果、株価が鉄道株は値上がりしました。
しかし、鉄道建設には長い時間がかかります。
いくつかの鉄道建設が難航していることが明らかになり、鉄道株のブームに陰りが差し始めます。
この時、マルクスとエンゲルス(マルクスの死後、「資本論」の第2巻と第3巻を編集・加筆した人物。)がこの鉄道株バブルがはじけるきっかけと考えたのが、1846年に起こったイギリスの農産物の不作でした。
農産物が不作だったイギリスは、穀物を輸入するために大量の現金が流出します。
その結果、資金繰りが苦しくなった銀行や企業が次々と倒産します。
この時、鉄道株の株価も大きく下落したのです。
こうした投機的な株式や債券をマルクスとエンゲルスは「利子生み資本」「虚構の資本」「空資本」と呼びました。